気づき_両利きの経営を読んで(その1:探索と深化)
はじめに
今回は、スタンドフォード大学のオライリー氏らの著書である両利きの経営の内容及び気づきをまとめます。
- 作者:チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン
- 発売日: 2019/02/15
- メディア: Kindle版
サクセストラップ
企業が利益を長期渡り確保するためには、探索と深化の両輪を上手くハンドリングすることが必要です。深化は既存事業において、漸進的な改善・開発を進めていくことです。一方、探索はコアとなる新規事業を発見・成長させていくことになります。
一方、グローバル化やデジタル技術導入によって変化に直面した組織が生き残るためには、この継続的な漸進型イノベーションにより既存の資産と組織能力を深化させつつ、新しい市場や技術を探索することが必要になります。
アマゾンの成功例
ジェフベゾスは1994年にアマゾンドットコムを法人化し、「地球の最大の書店」として宣伝しました。1996年、アマゾンの売上高は1600万ドルでした。そこから2016年時点で、900億ドルを売り上げています。
マッキンゼーの調査によると、競合する小売大手5社と比較して、アマゾンの取扱商品数は約7倍です。価格は5~13%安く、顧客満足度は13%高いようです。また、アマゾンの売上高の6%を研究開発費に充てていますが、これは他の小売業者の3倍です。
アマゾンのリーダーたちは、効率性や漸進型改善が重視される小売りや物流などの成熟事業を深化するのと同時に、既存の資産や組織能力を使って、柔軟性と実験が求められる新領域の探索を行うことができました。
ベゾスの戦略は短期的な収益性よりも、フリーキャッシュフロー(FCF)や市場シェアを増進させる長期的見解に立って意思決定することを重視しています。「利益率は最適化の対象ではない。私たちが望んでいるのは、一株当たりのFCFの絶対額を最大にすることだ。FCFは投資家が使えるものだが、利益率は使えない」といっています。
深化と探索に向けた戦略と実行
アマゾンのストーリーは、企業が既存の組織能力と市場を深化しつつ、新しい組織能力や市場を開拓している典型例です。
ベゾスが指摘するのは、顧客志向を打ち出す企業は多いものの、そのうち大半がそうなってないといいます。「自社の顧客には何が必要か」から始まる戦略のほうがはるかに安定しているといいます。その問いかけをしたうえで、自社のスキルとのギャップを調べていくのだ、とのことです。
kindleは、通販販売と事業がバッティングしています。しかし、アマゾンは短期的にいくつかの既存事業とバッティングすることを厭わないといいます。
確かに、弊社においてもお客様からしたら複数の同じ用途に使う商品があります。それ自体は、弊社の営業側がそれぞれの商品のすみ分けをお客様側に説明していることとと思います。
Ball社の例
著書では、アメリカのボール社(Ball)も紹介されています。 このBall社は1880年にブリキ缶の製造を始めた企業です。その後、ガラス製容器や冷蔵庫用ガスケット等広くメインとなる事業を変えながら成長した企業です。現在では、容器事業と航空宇宙事業の離れた2業種となっています。
同社は未来の成功のカギは、卓越したオペレーションを通じて「現業の価値を最大化」することと、専門技術を活用して「新しい製品と組織能力を拡大する」ことの両方が必要として明記しています。
終わりに
探索と深化を続けてきた企業は環境に対して大きく変化することを厭わないと感じました。これは、従業員の立場からすると前向きに仕事をする人間は良い刺激となり見方となってくれますが、変化を嫌う(特に年齢が高い)従業員からは反感が生まれるのでしょう。
日本では労使協調といわれていますが、大きな変革を要する場合はこの仕組みが非常に足かせとなっている気がします。
結果的に自らが変わろうとする意識を持たない限りはどこかで限界が来ます。生物学的にも環境に対応できる品種が生存確率が高いそうです。
まず自分自身が変わろうとする意識を持ち続けられているか(ここ数年は持ち続けられています)を意識づけられる気づきの多い内容でした。