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企業戦略論第四章「機会の分析」要約:バーニー著 (前半部分)

はじめに

 バーニー著の企業戦略論のうち、第四章「機会の分析」についてまとめます。

要約

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業界構造と機会

 本章では、経営環境における「脅威」に変わって機会を分析するフレームワークを提示します。

 SCPの理論では、外部環境に存在する機会を理解する一つの方法は、業界の構造とそれに付随する機会を検証することです。

 マイケルポーターが提唱する区切りとして5つ、そしてさらに著者らは3つ提唱しています。


(1)市場分散型業界
(2)新興業界
(3)成熟業界
(4)衰退業界
(5)国際業界
(6)ネットワーク型業界
(7)超競争業界
(8)コアなし業界

市場分散型業界における機会 

 多数の小・中規模の企業が存在するものの、市場シェアの大部分や主要技術を占有するような企業がいない場合を指します。例えば、サービス業界、小売業界、繊維業界、商業用印刷業界の大部分はこの分類になります。    市場分散型の業界に存在する「機会」は多数の小・中規模の企業を少数の企業に集約する戦略を実施することです。この集約・統合戦略の実施に成功した企業は、その業界のリーダーとなることで何らかの利益を得る可能性があります。

 例えば、アメリカでは市場分散度の高い葬儀業界において、サービスコーポレートチェーン(SCI)はバラバラの葬儀会社をチェーン化することで規模の優位が生まれることを見出しました。具体的には、棺桶などの原材料調達や、葬儀屋や霊きゅう車などの配分を見直すことにより、著しいコスト削減を達成しました。

 SCIは事業内容について極端に目立たないようにしているようです。SCIが保有する斎場はSCIとの関係を明らかにしていません。これは、遺族が葬儀チェーンよりも家族経営の斎場を好むからだそうです。

新興業界における機会

 新興業界とは、技術革新や市場需要の変動、または新しい顧客ニーズの出現により新たに生まれた業界、またはいったん消えたが復活した業界のことです。例えば、マイクロプロセッサ業界、パソコン業界、医療画像診断業界、バイオテクノロジー業界などはそのごく一部です。

 新興業界の企業が活用できる様々な機会は、一般的に先行者優位と呼ばれるカテゴリーに属されます。これは3つの要素を源泉としています。


①技術的リーダーシップ
②戦略的に価値ある資源の先制確保
③顧客のスイッチングコストの確立

顧客のスイッチングコストの確立

 新興業界の初期段階で意思決定を下す企業は、顧客のスイッチングコストを高めることができます。例えば、パソコン用アプリケーションソフト、処方箋医薬品、日曜食料品雑貨など、様々な業界で重要な役割を果たしています。

 パソコン用アプリケーションソフトの業界では、ユーザーは特定のソフトウェアの使い方を習得するために多大な投資を行います。一旦特定のソフトの使い方を覚えてしまうと、たとえ現在のものより優れたソフトが発売されても、すぐに乗り換えることはほとんどありません。

 有名な例としてはマイクロソフトのオフィスでしょう。近年グーグルによるG suiteが無料で使えるメリットがあることから広まっているようです。  

成熟業界における機会

 新製品や新技術の革新スピードが鈍化するにつれ、その業界は「成熟」のフェーズへと移行します。この成熟業界の特徴は、①業界の総需要の成長スピードが鈍化、②経験豊富なリピート顧客の存在、③生産能力増加スピードの鈍化、④新製品やサービスの導入頻度の鈍化、⑤外国製競合製品の増加、⑥業界の利益率の全体的低下等が挙げられます。

 一般的に成熟業界における機会は、新興業界での新製品・新技術の開発からシフトし、一般に


①現行製品の改良
②サービス品質の向上
③プロセス革新による製造コストの削減と品質向上

に存在しています。

③プロセス革新

 企業のプロセスとは、製品やサービスを設計・製造・販売するために企業が携わる様々な行動のことです。プロセス革新とは、これら現行のプロセスを改革・改良することです。  製品革新とプロセス革新、そして業界の成熟度との関係を検証しました(下記図)。

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 この分析によれば、業界発展の初期段階では企業が①技術的優位の確保、②戦略的経営資源の先制確保、③顧客のスイッチングコストの増大を目指すため、製品革新が非常に重要となります。

 一方、時間の経過とともに①製造コストの削減、②製品品質の向上、③経営プロセスの合理化を実現するためのプロセス革新がより重要となってきます。

 私が働いている業界(製造の一業態)も成熟業界といわれています。従って、このプロセスの改革を主に行うことが重要業務とされています。新商品開発は2番手とされていることからもまさに著者が指摘している状態になっています。

国際業界における機会

 21世紀の企業活動の大前提は、企業間競争がさらに国際的になっていることです。一見して国内に閉じているか、国内のさらに特定の地域にフォーカスしているようなビジネスであっても、ここ数年急速に国際化が進んでいます。

 競争の国際化は、競合の脅威、新規参入の脅威、大体の脅威を増大させるものの、新たな機会をもたらします。

 国際化した業界における機会は大きく3つのカテゴリーに分類されます。


①マルチナショナル
②グローバル
トランスナショナル

マルチナショナル戦略

 

 マルチナショナル企業は、同時に複数国市場、または複数の地域市場に事業展開を行います。しかし、これらの各事業はそれぞれ独立しており、各市場のニーズにどのように応じるかについては自由裁量が与えられています。

 例として、ネスレやGMなどがあります。ネスレの場合、同社の中で世界市場を対象に販売されているのはごくわずかです。むしろ、ネスレが事業展開する各国のマネジャーは、その国の消費者ニーズをつかみ、それを満たす製品をデザインし販売する責任を負っています。

 マルチナショナル戦略には二つの利点があります。一つは、その国もしくは地域で変化する需要に迅速に対応できる点です。二つ目に、事業部や本社間の実務上のつながりはほとんどないものの、経営資源が特定の地域市場での脅威の無力化や機会の活用に必要な場合、その資源を迅速に再配置することができます。

 例えば、マクドナルドがモスクワや他の東欧諸国でフランチャイズをオープンする際、その技術ノウハウや経営知識を全て活用することができた事例があります。  

グローバル戦略

 グローバル戦略は、生産、物流、その他の経営機能を全世界レベルで最適化させようとする戦略です。例えば、シンガポールの工場で製造コストが非常に低く品質が非常に高い場合はグローバル企業は自社の製造機能をシンガポールへ集約させようとします。

 グローバル戦略におけるリスクは3つあります。1つは、全世界に散らばった経営機能を組み合わせる必要があるため、世界レベルでの調整機能が複雑になる可能性があることです。2つ目は、地理的に広く分散することで輸送費が非常に高くなる可能性があります。3つ目に、各地域特有のニーズや機会、脅威に対応する能力がある程度犠牲にされる点です。  すなわち、国や地域によって市場構造にばらつきが少ない場合、特に魅力的なアプローチとなります。

トランスナショナル戦略

 トランスナショナル戦略とは、分散され、かつ相互に依存する経営資源やケイパビリティの統合ネットワークとされています。各国ごとに散らばる事業で得られたケイパビリティを企業全体に展開していく事業形態のことです。このことにより、グローバルな統合と規模の経済を実現できます。

終わりに

 今回、ポーターらが指摘した5つの業界構造についてまとめました。

 新しい業界が生まれて発展し、推定していく過程で新興業界→成熟業界→衰退業界と変化します。また、市場をローカルにとるかグローバルにとるかで市場分散型業界か国際業界か分かれます。

 つまり一企業が属する業界は複数あることが分かります(例えば、トヨタ自動車の場合は成熟業界である自動車業界であるとともに、市場がグローバルである国際業界である等)。

 分類ができた後は、各タイプにおいて発展させるための実例や逆に衰退した実例を学ぶことで自身の企業の取るべき戦略を練ることが重要となるのでしょう。