企業戦略論第五章「企業の強みと弱み」要約:バーニー著
はじめに
バーニー著の企業戦略論のうち、第五章「企業の強みと弱み」の前半部分についてまとめます。
要約
企業の強み・弱みに関する従来研究
経営の外部環境に関する分析はSCP(構造、行動、パフォーマンス)モデルによって行うことができます。一方、企業自体の強みと弱みの分析はより多岐にわたる研究の潮流に基づいています。
企業固有能力に関する伝統的研究
強み・弱みの研究において最初の流れは、企業固有能力に関する一連の研究です。大きく二つの流れがあり一つは経営者を能力する流れ、もう一つはその他の組織的属性を源泉とする考え方です。
企業固有能力の源泉としての経営者
1911年に多くの研究者らによって組織における経営者の役割に関する分析にまでさかのぼることができます。この初期の研究では、経営者は企業のパフォーマンスに非常に大きなインパクトを持つと仮定されています。
すなわち経営者は組織に合って自社の環境を分析し、強みと弱みを理解し、事業価値を最大化する戦略を選択できる存在であるということです。
この考え方はある程度信頼性がありますが、次の二点で応用可能性には限界があります。
1.「質の高い」経営者が持つべき特質・属性が定義されていません。現実には、GEのCEOであったジャックウェルチ(当時)は、ハンズオフの経営スタイルであるといわれていました。一方、マイクロソフトのCEOであったビルゲイツは実務の細部にわたって深く関わっていました。
2.経営者だけが組織の強み・弱みの源泉ではありません。経営者を競争優位の源泉として強調しすぎると、企業のパフォーマンスを理解するために必要な他の要素を見落とすことになります。
企業成長の理論
1959年エディス・ペンローズは著書「会社成長の理論」において、企業成長のプロセスと企業成長の制約条件の理解についてまとめました。 ペンローズが最も問題視した視点は、「企業というものが比較的単純な生産関数として適切にモデル化可能」という仮定でした。
この抽象度が高い仮定はある程度有効な場合があります。しかし、ペンローズはこの仮定が役に立たないという結論に達しました。
その代わり、企業が2つの意味において理解されるべきだと主張します。第一に、企業とは非常に多くの個人やグループによる行動をリンクさせたり調整したりする管理のフレームワークであること、第二に企業とは生産資源の集合体として理解しなければならない点です。
組織の強みと弱みの分析
近年、企業の強み・弱みを分析するフレーム枠としてリソースベースドビューが提案されています。これは、企業ごとに異質で、複製に多額の費用がかかるリソースに着目します。
リソースベースドビューの基本的前提
企業ごとの経営資源の異質性(≒生産資源が異なっている)と、固着性(≒経営資源の複製コストが非常に高価である前提で、企業の資源の強み・弱みを分析します。
その経営資源の種類は大きく4つのカテゴリーに分類されます。
1.財務資本:資本金、出資金、債権、内部留保金等
2.物的資本:固定資産、原材料、技術等
3.人的資本
4.組織資本:企業内部の関係、組織構造等
バリューチェーン分析
企業にとって競争競争優位を生じさせる可能性のある経営資源やケイパビリティを特定する方法にバリューチェーン分析があります。 このうち、ポーターらによって提案されたモデルについて考えます。
主要活動と支援活動に分類して分析します。主要活動は購買、製造、販売・マーケティング等として、支援活動はインフラ、技術開発、人的資源の管理と開発です。
これらの諸活動の一つ一つ、あるいは複数が連携して強みとなっているか分析することができます。
企業の強みと弱みの分析フレームワーク:VRIO
以上で分析した経営資源やケイパビリティが強みか弱みなのかを分析するフレームワークにVRIOフレームワークがあります。
1.経済価値(Value)に関する問
2.希少性(Rarity)に関する問
3.模倣困難性(Inimitability)に関する問
4.組織(Organization)に関する問
これらの問に対する答えによって、経営資源やケイパビリティが強みなのか弱みなのか判断できます。
まとめ
企業自体が持つ経営資源やケイパビリティをバリューチェーンにより洗い出し、VRIOフレームワークによって強み・弱みを洗い出すことを示してきました。
漏れなくダブりなく洗い出すことで企業全体の強みを把握することで、自社・他社の比較や打ち手を考えることに使用するものだと理解しました。