FumioBlog(ビジネス/読書)

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気づき:デジタルテクノロジーと国際政治の力学(著者:塩野誠)その2

はじめに

 経営共創基盤のマネージングディレクターである塩野誠さんの新著「デジタルテクノロジーと国際政治の力学」を読んで興味深かった点、気づきをまとめます。

デジタル通貨と国家の攻防

リブラ概要

   2019年6月18日にFacebookは暗号通貨「リブラ」構想を発表しました。このリブラの特徴は下記です。


・価格変動が起きにくい
・国境に関わらないグローバルな通貨及びインフラの構築を目指す
・世界中の人が金融サービスを受けられるようにすることを目指す

 価格変動が起きにくい理由として、リブラの発行団体は常に「発行されているリブラの層価格より多くのリザーブ資産を保有する」ことを明示しています。

 つまり、市場に出回っているリブラの数が多く、価値が低下してしまった場合はリザーブ資産によってリブラを買い戻して価格を適正に保ち、反対に価値が高まってしまった場合はリブラを発行して流通量を増やして市場をコントロールすると発表しています。

 Facebookは全世界で24億人の利用者がいるため、この構想は国家を目覚めさせ、デジタルテクノロジーによる国際金融の新たな世界を予見させるには十分でした。

 7月16日、リブラ事業の責任者のデイビット・マーカスは上院公聴会に召喚されました。その中で、個人のプライバシー問題やマネーロンダリングに利用される可能性があるなど、多くの重大な懸念が示されました。

 企業によるデジタル通貨は政府の主権を弱体化させるとし、フランスのブルーノ・ルメール経済財務大臣OECD会合の場で、「ヨーロッパの地でリブラ開発を許可することはできない」と声を上げました。

貨幣、通貨の起源(参考:サピエンス全史)

   貨幣は硬貨の鋳造が始まるはるか前から存在しており、様々な文化が貝殻、牛、皮、塩、穀物などほかの物を通貨として使用し栄えていました。

 現代の監獄や捕虜収容所でも、たばこがしばしば貨幣として使われています。

 貨幣は二つの普遍的原理に基づいています。


・普遍的転換性:貨幣は錬金術師のように土地を忠誠に、正義を健康に、暴力を知識に変換できる
・普遍的信頼性:貨幣は仲介者としてどんな事業・人どうしでも協力できるようにする

 この原理には邪悪な面があります。それは、あらゆるものが転換可能で、信頼が個性のない貨幣に依存しているときには、人間の価値が損なわれ需要と供給の冷酷な法則がそれに取って代わります。

 人類のコミュニティや家族は常に、名誉・栄誉、道徳性・愛といった値を付けられない貴重なモノへの信頼に基づいていました。それらは市場の埒外であるため、お金のために売買されるべきではありません。

 親は子供を奴隷として売ってはいけません。また、忠義な騎士は絶対に主君を裏切ってはいけません。貨幣はこうした障壁を突破しようとしてきました。

 

米ドルがいかに基軸通貨となったか

 基軸通貨には次の三要件が必要です。


1.その通貨の経済規模と金融市場の大きさ
2.規律ある金融機関、市場参加者、透明性
3.体制を維持可能な防衛・軍事力

 この要件を満たすことができる通貨が米国ドルです。

デジタル人民元

 2020年5月に中国はデジタル人民元を2022年2年の冬季オリンピックまでに発行する方針であるとの報道が出ました。世界二位の経済大国となった中国が、デジタル通貨というパラダイムシフトを好機と捉えてドル、ユーロ、円といった既存の通貨秩序に挑戦するのは自然といえます。

 デジタル人民元は中国ではDC/EP(Digital Currency/Electronic Payment)と呼ばれています。その特徴は、発行体が中央銀行であり完全な法定通貨となる点にあります。

 ユーザーは現金とデジタル人民元を交換し、DC/EPウォレットによってユーザー間で送金され、分散型台帳ではなく中央集権型台帳に取引が記録されます。

 使用した記録が台帳に残ることは、そこから個人情報が何らかの意図で使用・利用される恐れがあることを意味します。中国では社会信用システムの構想で、個人の信用に基づいて得られる公共サービスが変わるとされています。この動きにデジタル人民元も活用されるものと思われます。

 支払いの利用が便利になる一方で、個人の情報を握られてしまうため一概に良い面だけ取り上げてはいけないことが分かります。

まとめ

 従来の貨幣経済についてと暗号通貨の概要、デジタル人民元について理解しました。