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企業戦略論第二章「パフォーマンスとは何か」要約:バーニー著

はじめに

 バーニー著企業戦略論の第二章「パフォーマンスと何か」の要約です。

要約

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戦略とパフォーマンスの関係

 著者はパフォーマンスを「企業が期待されているだけの価値を生み出すことができるかどうか」と定義しています。

 つまり、企業が所有する経営資源(労働力、経営力、起業家としてのスキル、物理的資本、金融資本)によって生み出すと期待される経済価値のレベルに到達しているかどうか、という意味です。

 このパフォーマンスにおいて、期待された以上の価値を生み出している差分を経済的利益(EP:Economic Profit)もしくは経済レントと呼びます。

 経済的利益が標準を上回る企業は競争優位の状態にあるといえます。そして、これは競争優位な戦略を実行しているためと解釈できます。

  

企業のパフォーマンス評価

 このパフォーマンスを評価する方法は大きく分類して4種類あります。


1.企業の存続期間
2.ステークホルダー・アプローチ
3.単純な会計数値、修正会計数値
4.その他

この中でも、3.単純会計アプローチと修正会計アプローチについてまとめます。

単純会計アプローチ

 最もよく用いられる企業のパフォーマンス測定は、会計上の基準です。 企業パフォーマンスを認識するための会計的アプローチでは、多くの場合「比率」分析を多用します。会計情報に基づく比率には様々なバリエーションがあります。代表的なものを下記に示します。

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この会計上のアプローチは企業のパフォーマンスを知るうえで有用なツールです。しかし、万能ではありません。問題点についてまとめます。

経営上の裁量

 経営幹部は会計上の手法を選択する上で、ある程度自由裁量権を持ちます。売り上げの計上方法、後入れ先出し/先入れ後出し等の在庫価値評価手法、減価償却率(定率法か定額法か)等々です。

 その結果、会計のパフォーマンスはある程度経営上の意向や選好が反映されてしまいます。

短期利益重視のバイアス

 次に、短期利益重視のバイアスがかかる点に注意する必要があります。すなわち会計上では、より長期的視野(3~10年)に立った複数年度にまたがる投資は、その投資が直接収益を生み出さない年度においてもコストとして賦課されます。

 短期ベース(1年や四半期ごと)の会計的パフォーマンスを優先すると、長期的投資を行うことに失敗することに繋がります。著書では、1980-2000年の20年間の世界市場で日本企業が台頭してきた理由の一つとして、日本企業は短期の会計上の利益をそれほど重視していない事実があるためと記されていました。

目に見えない経営資源やケイパビリティの価値評価

 無形の経営資源やケイパビリティの価値が会計的手法に反映されていない問題点があると指摘しています。

 無形の経営資源やケイパビリティとは、「顧客との密接な関係」や「企業へのロィヤリティ(=忠誠心)」、「ブランドの認知」などの明示的に記述し、価値評価が難しい因子です。

 これらはつまり人材に関する資産評価と解釈できます。

修正会計アプローチ

 これまでの単純会計的アプローチを加工修正して、企業の経営パフォーマンスをより正確に評価する手法が検討されてきました。

 パフォーマンスとは、企業への期待と現実の差であるとまとめてきました。この期待されるパフォーマンスはその資本コストに反映されます。資本コストは、資本の提供者(債権者・株主)がその投資に対して期待するリターンを意味します。

 修正を施した会計指標のうち4つを取り上げます。それらは、投下資本利益率(ROIC)、経済的利益(EP)、市場付加価値(MVA)、そしてトービンのqです。これら4つの指標を合わせ考えることで、企業の真の経済的パフォーマンスがよりクリアになります。それら4つの定義は下記です。

 
ROIC=NOPLAT / 投下資本
EP=投下資本×(ROIC-WACC)
MVA=(株主資本の市場価値+負債の市場価値)-会計上の簿価
トービンのq=企業の市場価値 / 総資産の簿価

 今回は紹介にとどめることとし、次回にこれら4つの詳しい求め方をまとめたいと思います。

おわりに

 企業のパフォーマンスを評価する指標は大きく4種類あることをみてきました。しかしどれも全て網羅しているわけではなく、評価者が総合的に勘案する必要があることが分かりました。

 著者はこの中で日本企業が躍進した理由の一つに短期的な会計上の指標を重視していなかった点を述べています。株式会社においては株主の意向を企業の戦略に考慮・反映させる必要があります。

 日本企業においては短期的な利益を出すことを要求する(と思われる)株主の意向を優先していない、と解釈しました。国ごとの株主・企業の関係性についても調べてみたくなりました。