FumioBlog(ビジネス/読書)

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気づき_コーポレート・トランスフォーメーション を読んで(その2)

はじめに

 前回に引き続き冨山和彦氏の「コーポレートトランスフォーメーション」を読んだ内容の気付きを書きます。

スマイルカーブについて

 ある製品のバリューチェーン全体をみたときに、川上(企画・設計・部品)と川下(販売メンテナンス)側の利幅が厚くなります。一方、真ん中の製造工程(組み立て)はほとんど利幅が取れなくなる現象をスマイルカーブと呼びます。

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 例としてパソコン業界があります。川上のCPUを抑えたインテル、川下の顧客との接点を抑えたマイクロソフトに挟まれ、真ん中の製造工程を担っていた日本のパソコンメーカーは軒並み苦境に陥り、撤退を余儀なくされました。

 インターネットとモバイルの時代に入ってからは、川下側で巨大なプラットフォーマーになったのがGAFAです。川上のコンポーネントレイヤーにクアルコムやNVIDIA等が該当します。

 スマイルカーブ現象が起きてしまった産業では、真ん中の組み立て工程は儲かりません。川上のキーコーポーネントを押さえるか、川下のプラットフォームを押さえるかが重要になります。

 日本の電機メーカーはこの流れを大きく受けました。ソニーは今や史上最高レベルの収益をたたき出す会社になりました。現状の収益を支えているのは、ゲーム、金融、エンタメコンテンツ、CMOSセンサーとスマイルカーブの両極端の位置するところです。

 従って、現在の事業ポートフォリオと組織能力ポートフォリオを見直し、入れ替えることを日常的に行うことも著者が呼ぶ「両利き経営」の必要条件なのです。

化学、素材産業へのDX化

 化学、素材産業はこれまで比較的DX化の直撃を受けてきませんでした。長年における蓄積技術、すり合わせ技術が開発技術措定も生産技術としてもまだまだモノをいう世界です。

 比較的スマイルカーブにおいては左上をポジショニングできるところにいます。しかし、マテリアルインフォマティクス等のデジタル技術で開発効率が上がる一方で、日本企業特有のすり合わせ要素が生み出す付加価値要素が小さくなる可能性があるといいます。

 私も化学、素材産業で働いています。特に製造現場に近い環境で働いているものの、あまりDX化という言葉が現場へ伝わっている感触はありません。また、危機感はあるものの自分たちは大丈夫だろう、と高をくくっている人が多い印象があります。

 マテリアルインフォマティクス自体は適用検討が進んでいる段階で、本技術により新製品が生み出されていると聞こえてはきません。しかしながら、AI・機械技術活用は研究所含め全社的に展開したそうな雰囲気はバンバン感じます。

 デジタル技術により活用をすべきポイントは、所謂俗人的な技能や技術についてだと思います。達人の頭の中にあるものをデジタル化させ、いつでも引き出せるようにする・あるいは引き継ぐ体制を作ることの方がデジタル技術にまず求められることだと思っています。

終わりに

 スマイルカーブについては、各製品や事業等意識してみると非常に興味深い知見が得られました。特にソニー等は大きく川下、川上に舵を取っていることが分かりました。