気づき_コーポレート・トランスフォーメーション を読んで(その3)
はじめに
今回も冨山和彦氏の本「コーポレートトランスフォーメーション」を読んだ気づき、内容をまとめます。また、経理に関する内容については、こちらを参考にしました。
- 作者:吉川 武文
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: 単行本
事業探索投資の仕方
新しい事業を探索する上での投資は、本業が生み出す営業キャッシュフローで行うべきといいます。また、経営のコア指標として営業キャッシュフローやEBITDAとしているところはまだ少ないといいます。
ここで、営業キャッシュフローについて簡単にまとめます。
そもそもキャッシュフローとは、会社における資金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことをいいます。
大きく営業活動、投資活動、財務活動の三つの区分に分けて表示します。今回の営業キャッシュフローは、通常の事業活動をして稼いだお金を表します。
一方で、P/L(損益計算書)やB/S(貸借対照表)は一会計期間や一定期間の終点時点での状況を表したものです。
P/Lの数値がいじくり回されて当てにならないのなら、直接キャッシュを見よう、という動機で用いられる手法がこのキャッシュフローになります。
また、EBITDAも営業キャッシュフローに近い考え方の指標になります。営業利益に減価償却費を足したものになります。「イービットディーエー」とか「イービットダー」と呼ぶようです。
EBITDAを使用すると、異なる業種にも統一した業績指標を適用できます。つまり、設備投資が嵩む産業とそうでない産業と比較することが可能になります。
キャッシュフロー経営
下のC/Fは財務会計のP/Lの利益(300)から出発して、営業活動のC/F、投資活動のC/F、財務活動のC/Fを順次調整して最終的なキャッシュの増減を求める構造です。 利益とキャッシュの増減が大きく乖離しているため、倒産の原因になります。
A.営業活動のキャッシュフロー
いわゆる「儲け」に関わるキャッシュフローです。B/Sの社内留保(カネ)の増加に関わるものであります。 ①売上があっても売り上げ債権(見えない在庫)を放置すれば実際にはキャッシュが入ってこない、②固定費を期末在庫に配布すると本当はキャッシュが出て行っているのにP/L上では費用にならない等の金額修正が行われています。
B.投資活動のキャッシュフロー これはB/Sの「モノ」(生産設備など)の取得に関わるキャッシュフローで、会社が行った設備投資の状況を示すものです。 工場や機械装置を購入すればC/F上は多額のキャッシュが出ていきますが、あくまでもキャッシュと生産設備の等価交換であるためP/L上は何も表れてこない「見えない取引」になります。
従い、安易な生産設備取得は黒字倒産の原因になりやすく要注意と言えます。
C.財務活動のキャッシュフロー
B/Sの「カネ」の調達に関わるキャッシュフローです。
見えない取引に注意する
さて、P/Lだけ見ているとキャッシュフローの危険な変化を見落とす可能性があります。
例1.固定費の配賦
固定費を製品に配賦し、その製品が在庫になる場合既にキャッシュが出ていっているのにP/Lには費用が計上されていないため、キャッシュ危険な状態になります。
例2.在庫の長期死蔵
多額の費用を掛けた在庫を長期死蔵する場合、既にキャッシュが出て行っているのP/L上では費用が計上されていないためキャッシュ危険な状態になります。
例3.売上債権の放置 製品が販売されればP/L上に売上が計上されます。しかし、売上に見合うキャッシュがすぐに入るわけではなく売上債権を受け取った上で、一定期間後にキャッシュが入ってきます。
従い、長期にわたり売上債権を放置すればキャッシュ危険な状態になります。
例4.生産設備の取得
生産設備を取得した場合、実際にはキャッシュが出ていっているのにP/L上には費用は計上されません。これは、キャッシュと生産設備を等価交換したと見なされるためです。
既にキャッシュが出ていっているのにP/L上の減価償却費は通常ゆっくり行われるため、キャッシュ危険な状態になります。
終わりに
新しい事業を始める場合のキャッシュの使い方とそもそものキャッシュフローをまとめました。