気づき_両利きの経営を読んで(その2:イノベーションストリーム)
はじめに
今回も、スタンドフォード大学のオライリー氏らの著書である両利きの経営の内容及び気づきをまとめます。
- 作者:チャールズ・A・オライリー,マイケル・L・タッシュマン
- 発売日: 2019/02/15
- メディア: Kindle版
イノベーションストリーム
市場や技術の意向が企業や産業に与える影響や、そうした変化が既存事業の脅威となりうる状況について、分析的に考えるフレームワークを著者らはイノベーションストリームとして提案している。
イノベーションを起こすときには、①新しい組織能力を身につけるか、②新しい市場・顧客のに対応する場合がある。
この関係を分解すると下記表のようになる。
領域Aは、企業が既存の組織能力を拡大し続け、新しい製品・サービスを既存市場に提供する場合です。
領域Bは、最も破壊的で、企業は新しい組織能力を開発し、かつ新市場に対応しなくてはなりません。
領域Cはそこまでは快適はないものの、既存の市場・顧客に新しい製品、サービスを届けるために、企業は新しい組織能力を身につける必要が生じます。
領域Dは、企業が既存の組織能力を使うものの、新しい異なる市場に対応する場合です。
富士フィルムの場合
富士フィルムは2001年時点ではコダックと同様にフィルム販売の世界的リーダーとして互角でした。
富士フィルムは強力な製造スキルを持ち、小売部門における存在感も大きかった。一方、世界におけるフィルムの売り上げは2000年をピークに急下降し、2005年には半減しました。
この危機に対応するために、富士フィルムは化学分野の専門知識を新規市場に活かそうと努力し始めました。当時CEOの古森氏は「自分たちの技術資源や経営資源を活かせる分野はどこかを見極めなくてはならなかった」といいます。
財務的圧力の中で、古森氏が明確に打ち出したことが、自社の独自技術を新しい製品・サービスに対応することを重視する新しいビジョンです。
5千人を解雇するとともに、研究開発を中央に集約し、研究の初期段階と新技術に焦点を置きなおしました。また、関連する新しい組織能力を獲得するために、積極的にM&Aに取り組み始めました。
従業員から出てきた新規事業案に資金を拠出できるように、社内ベンチャーキャピタルのプロセスも用意しました。
下記表のとおり、富士フィルムは現在年商230億ドルの企業となりました。同社は、エレクトロニクス(複合機、半導体材料、携帯電話用レンズ等)、医薬品、化粧品、再生医療等革新となる組織能力を活かして、多様な産業で戦っています。
古森氏は「自分で変化を作り出せる企業がベストな企業だ」と指摘します。
終わりに
富士フィルムを例に、イノベーションストリームについてまとめました。社名となっているフィルム分野から大きく事業を変えていくことは、おそらく社内で反発する人も多かったと思います。
その中で、それでも新しい事業へ転換していくことはリーダーシップが強く求められたのだと想像します。
私自身は従業員側の立場での振る舞いを見直すいいきっかけとなりましたし、経営側の立場をより深く理解しようと思える内容でした。