FumioBlog(ビジネス/読書)

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気づき_コーポレート・トランスフォーメーション を読んで(その4:固定費改革、ROIC経営)

はじめに

    今回も冨山和彦氏の本「コーポレートトランスフォーメーション」を読んだ気づき、内容をまとめます。

CX手段:リバウンドなき固定費改革

 中高年リストラが10年おきくらいにダイエット後のリバウンドのように繰り返されてきています。リバウンド防止をビルドインした形での固定費改革もCX(コーポレートトランスフォーメーション)的な連鎖効果が大きいといいます。

 企業の利益構造は粗利の厚みであるGP(Gross Profit)マージン率(対売上粗利率)と、固定費の重さ(対売上固定比率)で決まります。つまり、GPマージン率ー固定費率=営業利益率です。

 粗利率の高い化粧品ビジネスなどで失敗するのは、高すぎる営業マーケティング関連固定費が要因である場合が多いようです。

 この固定費は曲者で、放っておくと自己増殖的に増えていきやすいのと、さらには重い固定費を与件として歪んだ戦略行動を誘発して、中長期的な戦略行動を阻害します。

固定費が増える要因と怖さ

 固定費が増えていく典型的要因の一つは、終身年功型の組織構造にあります。年齢を重ねることで給料が上がるものの、並行して地位もマネジメントレイヤーに上がることで多くの従業員はかえって付加価値を生むことが難しくなります。この人たちの多くが、間接部門・管理部門に滞留し、重い間接固定費としてのしかかる現象が世代ごとに繰り返されます。

 固定費の怖さは、高固定費が慢性化するとその固定費を短期的に薄めるために粗利さえ出ていれば薄利の商売でも良いと売り上げを作る誘因に晒されます。

 結局、小出しの新商品開発と販売キャンペーンに移って繰り返されます。この薄利構造では真に未来を見据えた腰を据えた開発投資やM&Aを行えなくなり、成長力を失っていきます。

 重い固定費は企業の持続可能性を危うくする経済的な「サイレントキラー」といえるのです。

固定費改革の手法

 固定費改革のもの単に中高年リストラや設備除去、現存など見かけのコストを落としてもCX上は意味がありません。

 年功的な給与体系や昇進体系に大きくメスを入れなければならないし、粗利がプラスならば良しとする事業部や営業部門、生産部門の行動変容を促すよう事業×機能ポートフォリオ経営上の売却や撤退基準とも連動した利益評価指標も導入しなければなりません。

 また、不可分な共通部門を最小化すべく組織構造改革、ビジネスプロセス改革を行い共通部門をモジュール的に分解することで、限りなく個々の事業や製品と紐づけられるように変容する必要があります。

 すると、自然に過剰な共通固定費が浮かび上がってくるので、そこに張り付いている人間の頭数と総コストはITなどのデジタル技術や海外へのアウトソーシングなども活用して恒久的に削減し、二度とリバウンドしないようピン止めする必要があります。

事業×機能(組織能力)ポートフォリオ経営改革

 事業と機能(組織能力)ポートフォリオの新陳代謝力をリアルに高めることは日本企業にとって「CXのへそ」といってもいい勘所中の勘所です。

 企業の稼ぐ力と成長を維持するためには、手持ちの事業ポートフォリオの入れ替えを常態的かつ迅速に行うことが必須です。

 事業ポートフォリオ経営を実行化するためには、一つは事業ごとの管理会計的な収支把握を行い、ROICやEBITDAなどの管理指標に基づいて当該事業の戦略的ポジショニングを定期的にモニタリングし、随時、事業の撤退や売却について決断できる仕組み、体制を整備する必要がある。

 この仕組みの中で不可欠なのは、ROICのような管理指標がツリー分解されて、事業部の現場サイドにおいて手触り感のある実用的なKPIとして根付かせることです。

ROICとは

ROIC:Return on Invested Capital とは、税引後営業利益を投下資本で割ることで求められる指標です。この指標により、事業活動のために投じた資金を使って企業がどれだけ効率的に利益に結びつけられているかを知ることができます。

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 調達サイドから投下資本を見ると、有利子負債と株主資本のみということになります。有利子負債はDebt性、株主資本はEquity性といいます。

 このROICを上げるために一時的に投下資本を減らせば良いわけではありません。戦略コストである研究開発、広告宣伝、教育、あるいは採用などのインプット(=未来投資)を減らしていくと、将来のアウトプット(=営業利益)に影響を及ぼします。

 従て、インプットを単純に減らすのではなくきっちりと有効なアウトプットに繋がるインプットが求められます。

終わりに

   固定費改革について、終身年功型を止めるべき、の文言は非常に私自身の身が引き締まります。30代に入ってきたため、コストカットの対象に一歩踏み込んだ状態だからです。日々学ぶことを止めずに進むことで価値を上げていく必要があることを実感させられます。

 ROIC経営については、投下した資本に対して利益を出せているかという視点は初めて知りました。如何に利益を出せるかに頭を使っていましたが、インプット側についても財務諸表を注目していきたいと思います。