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企業戦略論第三章「脅威の分析」要約:バーニー著 その2

はじめに

 バーニー著の企業戦略論のうち、第三章「脅威の分析」の後半部分についてまとめます。  

競合の脅威

 ポーターによって指摘された第2の脅威は、互いに直接競合する企業間の競争の激しさについてです。自動車についてはかつてGMにとってのライバルはフォードやクライスラーと言われていました。現在(2003年当時)は、トヨタや日産、本田などがライバルへとその存在感を大きくしています。

 競合は利益を低下させるため、既存企業にとっては脅威です。価格引き下げ、新製品導入、広告キャンペーン、そして迅速な競争行動や他社への対抗措置の事象は、その業界の競合度が高いことを示します。

 競合度が高くなる可能性が高い業界の特徴は下記です。


1.競合企業が多数存在する
2.それぞれの競合企業が同規模で、市場への影響力も同程度である
3.業界の市場成長率が低い
4.製品差別化が難しい
5.生産能力の増強単位が大きい
 

競合企業が多数存在

 その業界に存在する企業数が多く、各企業がほぼ同じサイズで、市場への総供給量に対してもほぼ同じ影響力しか持たない場合、競争は激しくなります。例えば、ラップトップパソコン市場はそんなケースでした。全世界で120社以上が同業界参入し、技術と生産方法が日々改良され、価格は年々15~20%低下しました。メーカーの粗利率は当初10~13%だったものが、3~4%に急落しました。

市場成長率が低い

 市場の成長スピードが遅い場合、競合が激しくなる傾向があります。つまり、業界の成長率が遅いと、売上高を増加させるためには既存企業のシェアを奪わなければなりません。

 ペプシとコークの間の「コーラ戦争」が1970年代半ばに本格化した理由は、ソフトドリンク市場の成長率が水平になった時期であったためです。

代替品の脅威

 経営の外部環境における第3の脅威は代替品です。代替品やサービスは、自社とほぼ同じ顧客ニーズを異なる方法で満たします。GMの自家用車の代替品には、自転車、バス、電車、飛行機と様々あります。

 著書が出版された2003年時点は、GAFAプラットフォーマーが強く世の中に影響する前です(iMacgoogleなどは既に世の中に広まっていましたが)。mp3プレーヤーや携帯電話の代替品としてのiPhoneや、中間業者の入らないECサイトの先駆者としてのAmazonが強力な代替品、サービスを提供する世の中となりました。

 

供給者の脅威

 第4の脅威は供給者(サプライヤー)です。供給者は、供給価格を上げたり、供給物の品質を下げたりすることなどによって、供給先である既存企業のパフォーマンスに対する脅威となります。

 脅威を非常に高くするような供給者の属性を下記に示します。


1.供給者の業界が少数の企業で支配
2.供給者の販売する製品がユニークか、あるいは高度に差別化
3.供給者が代替の脅威に晒されていない
4.供給者が前方向への垂直統合(自社側)をする恐れがある
5.供給者にとって自社が重要な顧客ではない
 

購入者の脅威

 経営の外部環境における脅威の最後は、購入者(顧客)です。自社の立場から見て、供給者は自社のコストを増加させようとこうどうするものの、購入者は自社の収入を減少させようと行動します。

 購入者の支配力が大きいほど、その業界の企業利益はより大きな脅威に晒されることになります。

 購入者の脅威が存在する可能性を示唆する条件は下記です。


1.購入者が少数しかいない
2.購入者に販売される製品が差別化されておらず、標準品である
3.購入者に販売される製品価格が、購入者の最終製品に占める大きな割合になっている
4.購入者が高い経済的利益を得ていない
5.購入者が後方垂直統合をする恐れがある
 

5つの競争要因と業界平均のパフォーマンス

 5つの競争要因モデルには、戦略の選択と実行を考慮する際に、3つの重要な意味があります。第一にこのモデルは経営の外部環境に存在する最も普遍的な「脅威の源泉」を示しています。第二に、このモデルは各業界における脅威を具体的に明らかにするために用いることができます。最後に、このモデルによって各業界の平均的なパフォーマンスがどのレベルのものかを予測することができます。

 重要な点は、5つの競争要因モデルによって1つの業界を経済学上の完全競争の状態へシフトさせていく様々なプロセスが明らかになることです。

演習問題

 問「5つの競争要因モデルによる、潜在的な脅威の一つは購入者です。購入者が脅威になり得る事実と、購入者を満足させなければならないことは互いに矛盾しないだろうか。」

解「矛盾しない。なぜならば、購入者を満足させるような製品の開発、提供を供給者が行うことが脅威となるリスクを減らすことに繋がると考えるからです。」

終わりに

 2回に分けて脅威の分析についてまとめました。

 まずは事業を行う業界の分析を行うことで、完全競争~独占の状態にあることを理解しました。その後、5つの競争要因モデルをそれぞれまとめました。

 企業が高い利益を得るためには、独占の状態であることが望ましいものの、そこに参入するコストが非常に高いことも分かりました。

 事業経営を進めるうえで、この脅威の分析が必要なことは言うまでもありません。特に重要なことは、日々新しい脅威が現れていないかや競争の状態が変わっていないかフォローしていくこととそれに対して自社が進めるべき戦略を考え続けなければならないことだと思いました。