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企業戦略論第四章「機会の分析」要約:バーニー著 (後半部分)

はじめに

 バーニー著の企業戦略論のうち、第四章「機会の分析」の後半部分についてまとめます。

ネットワーク型業界での機会

   著者らは、製品やサービスの価値が少なくとも部分的に、それらの製品やサービスの販売量そのものによって影響を受ける場合、そのような業界をネットワーク型業界と呼ぶこととしました。

 例えば、電話機はそれを所有する人数が少数の場合価値がある製品と言い難い状態です。しかし、莫大な人数が電話機を所有した場合は、コミュニケーションツールとして価値が劇的に上昇します。従って、電話機を所有する人数が増えるにつれて価値が増大する関係が生まれています。このような業界を収穫逓増の業界と呼びます。

 ネットワーク型業界では、先行行動はその業界の製品やサービスをデファクトスタンダードにすることによって経済価値を創出します。この業界では、いったんある企業の製品やサービスがスタンダードになると、事実上その製品やサービスが市場シェアの全てを占める可能性があります。

家庭用ビデオプレーヤー規格の例

 家庭用ビデオプレーヤーの市場では、ネットワークの力学が非常に重要でした。価値は、再生できる映画のビデオテープがどれだけ豊富かで決まります。次に、そのプレーヤーで再生できる映画ビデオの豊富さは、その規格のプレーヤーがどれだけ売れているかで決まります。

 初期はソニーのベータと、松下電器のVHSが競合していました。ソニーのベータの方が技術的に優れているといわれていました。しかし、ソニーはベータ技術を高いライセンス料を払わない限り他社へ供与しようとしませんでした。一方、松下電器はVHSを比較的安価なライセンス料で供与し、大多数のメーカーがVHSを売り始めました。従って、VHSの普及台数増加するにつれて、その価値が増大しました。そしてとうとうVHSがデファクトスタンダードとなりました。

 

超競争業界における機会

 競争状況の展開が不安定で予測困難な業界を超競争業界と呼びます。超競争業界では、企業は自社の競争する基本条件が安定しており、常に変化の予測が可能だと前提を置くことができません。

 超競争的と考えられる業界の例としては、電子商取引とバイオテクノロジーがあります。これらの業界では、競争の基本条件が常に変化しているため、現時点でそれらを正確に理解することが難しいです。

 この種の業界には2つの重要な戦略機会が存在します。


①柔軟性
②先制破壊

柔軟性

 企業がある戦略から他の戦略へ、低いコストで切り替える能力を保持しているとき、その企業は柔軟性の機会を追及しているといえます。

先制破壊

 先制破壊とは、自らその業界の競争プロセスを支配し、競争の基本条件を左右するような戦略を追求することです。こうすることにより企業は一時的に競争優位を獲得できます。

コアなし業界における機会

 買い手・売り手の双方が最高の条件だと思える取引が永遠に成立しない場合があります。この種の市場のことをコアなし市場と呼びます。

 コアなし業界の特徴を数多く備えているのは、規制緩和後のアメリカ航空業界です。1978年以前のアメリカ航空業界は、がっちりと規制された業界でした。1978年以降、ルート決定、運航頻度、そして価格決定プロセスはすべて市場原理に基づいて決められることになりました。

 この厳しい競争の時期はそう長く続かないと思われていました。しかし、実際のところ10年以上の長きに渡り、事実上すべてのアメリカ航空会社は損失を出し続けました。 

 

戦略グループによる脅威と機会の分析

戦略グループとは

 戦略グループとは、同一業界内において他の企業とは異なるある共通の脅威と機会に直面している企業群のことです。単にある企業群が同じ脅威と機会を共有しているだけではなく、その企業群が直面する脅威や機会が、同じ業界の他社と異なっていなければいけません。

 

戦略グループ概念の適用

 この概念は、脅威と機会の構造を分析するために多くの業界に対して用いられました。例えば、製薬業界における戦略グループ内部、そして戦略グループ間の競争がいかに進化したかという研究があります。

 製薬業界内の移動障壁として大きく3つ挙げられました。研究開発スキル、マーケティング・スキル、そして製品ポジショニングスキルです。これらの移動障壁は全て、規模の経済、製品差別化、規模に無関係なコスト優位の組み合わせによって成立しています。

 以上のような移動障壁が特定されると、次はこうした障壁をめぐる企業行動を観察・評価することが可能になります。ある企業は自社の研究開発能力を強化し、他の企業は前期の企業が保有する研究開発能力を外部調達する道を選択します。

戦略グループ分析の限界

 戦略グループ分析は、業界の外部環境における脅威と機会の分析を補うツールとして重要な役割を果たします。しかしながら、この戦略グループ分析によって得られた定義は人為的カテゴリーにすぎません。この分析結果を解釈する際には、非常に慎重でなくてはなりません。

脅威と機会の分析におけるSCPモデルの限界

   SCPモデルに則った脅威と機会のモデルが、戦略の選択を行おうとする企業にとってきわめて重要なツールであることは疑いありません。しかしこのモデルにもいくつか見逃してはならない重大な限界があります。


1.企業利益と業界参入に関する前提
2.非効率な企業戦略の役割
3.限定された企業異質性の前提
 

企業利益と業界参入に関する前提

 企業レベルでは、既存企業の高いパフォーマンスが参入を促進するか抑止するかという問題は、企業がある業界に新規参入するかどうかを判断する際に非常に役立つ示唆を与えてくれます。

 既存企業が寡占的・独占的行動故に高い利益を得ているとしたら、新規参入は魅力的な選択肢となるでしょう。一方、既存企業自身が保有する競争優位によるものである場合、その新規参入へのコストはよりかかるため、相対的に魅力が低くなるでしょう。

終わりに

 ネットワーク型業界の特徴はデファクトスタンダードであることが他の業界に比べて高い価値であることが実例(マイクロソフト等)を通して理解できました。その理由として、スイッチングコストが高いことと収穫逓増の業界であることが挙げられます。

 また、後半のSCPモデルの限界については、次章で扱うリソースベースドビューに繋がる話です。外部環境(SCPモデル)だけで分析することの困難さを見てきたため、次に内部環境(リソースベースドビュー)で分析することの重要性を確認していきます。