FumioBlog(ビジネス/読書)

ビジネスやプログラミング等の学んだことのアウトプットを目的に記事にしています

気づき_コーポレート・トランスフォーメーション を読んで(その4:固定費改革、ROIC経営)

はじめに

    今回も冨山和彦氏の本「コーポレートトランスフォーメーション」を読んだ気づき、内容をまとめます。

CX手段:リバウンドなき固定費改革

 中高年リストラが10年おきくらいにダイエット後のリバウンドのように繰り返されてきています。リバウンド防止をビルドインした形での固定費改革もCX(コーポレートトランスフォーメーション)的な連鎖効果が大きいといいます。

 企業の利益構造は粗利の厚みであるGP(Gross Profit)マージン率(対売上粗利率)と、固定費の重さ(対売上固定比率)で決まります。つまり、GPマージン率ー固定費率=営業利益率です。

 粗利率の高い化粧品ビジネスなどで失敗するのは、高すぎる営業マーケティング関連固定費が要因である場合が多いようです。

 この固定費は曲者で、放っておくと自己増殖的に増えていきやすいのと、さらには重い固定費を与件として歪んだ戦略行動を誘発して、中長期的な戦略行動を阻害します。

固定費が増える要因と怖さ

 固定費が増えていく典型的要因の一つは、終身年功型の組織構造にあります。年齢を重ねることで給料が上がるものの、並行して地位もマネジメントレイヤーに上がることで多くの従業員はかえって付加価値を生むことが難しくなります。この人たちの多くが、間接部門・管理部門に滞留し、重い間接固定費としてのしかかる現象が世代ごとに繰り返されます。

 固定費の怖さは、高固定費が慢性化するとその固定費を短期的に薄めるために粗利さえ出ていれば薄利の商売でも良いと売り上げを作る誘因に晒されます。

 結局、小出しの新商品開発と販売キャンペーンに移って繰り返されます。この薄利構造では真に未来を見据えた腰を据えた開発投資やM&Aを行えなくなり、成長力を失っていきます。

 重い固定費は企業の持続可能性を危うくする経済的な「サイレントキラー」といえるのです。

固定費改革の手法

 固定費改革のもの単に中高年リストラや設備除去、現存など見かけのコストを落としてもCX上は意味がありません。

 年功的な給与体系や昇進体系に大きくメスを入れなければならないし、粗利がプラスならば良しとする事業部や営業部門、生産部門の行動変容を促すよう事業×機能ポートフォリオ経営上の売却や撤退基準とも連動した利益評価指標も導入しなければなりません。

 また、不可分な共通部門を最小化すべく組織構造改革、ビジネスプロセス改革を行い共通部門をモジュール的に分解することで、限りなく個々の事業や製品と紐づけられるように変容する必要があります。

 すると、自然に過剰な共通固定費が浮かび上がってくるので、そこに張り付いている人間の頭数と総コストはITなどのデジタル技術や海外へのアウトソーシングなども活用して恒久的に削減し、二度とリバウンドしないようピン止めする必要があります。

事業×機能(組織能力)ポートフォリオ経営改革

 事業と機能(組織能力)ポートフォリオの新陳代謝力をリアルに高めることは日本企業にとって「CXのへそ」といってもいい勘所中の勘所です。

 企業の稼ぐ力と成長を維持するためには、手持ちの事業ポートフォリオの入れ替えを常態的かつ迅速に行うことが必須です。

 事業ポートフォリオ経営を実行化するためには、一つは事業ごとの管理会計的な収支把握を行い、ROICやEBITDAなどの管理指標に基づいて当該事業の戦略的ポジショニングを定期的にモニタリングし、随時、事業の撤退や売却について決断できる仕組み、体制を整備する必要がある。

 この仕組みの中で不可欠なのは、ROICのような管理指標がツリー分解されて、事業部の現場サイドにおいて手触り感のある実用的なKPIとして根付かせることです。

ROICとは

ROIC:Return on Invested Capital とは、税引後営業利益を投下資本で割ることで求められる指標です。この指標により、事業活動のために投じた資金を使って企業がどれだけ効率的に利益に結びつけられているかを知ることができます。

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 調達サイドから投下資本を見ると、有利子負債と株主資本のみということになります。有利子負債はDebt性、株主資本はEquity性といいます。

 このROICを上げるために一時的に投下資本を減らせば良いわけではありません。戦略コストである研究開発、広告宣伝、教育、あるいは採用などのインプット(=未来投資)を減らしていくと、将来のアウトプット(=営業利益)に影響を及ぼします。

 従て、インプットを単純に減らすのではなくきっちりと有効なアウトプットに繋がるインプットが求められます。

終わりに

   固定費改革について、終身年功型を止めるべき、の文言は非常に私自身の身が引き締まります。30代に入ってきたため、コストカットの対象に一歩踏み込んだ状態だからです。日々学ぶことを止めずに進むことで価値を上げていく必要があることを実感させられます。

 ROIC経営については、投下した資本に対して利益を出せているかという視点は初めて知りました。如何に利益を出せるかに頭を使っていましたが、インプット側についても財務諸表を注目していきたいと思います。

 

マクロ経済学についてまとめ(GDP編)

はじめに

 今回は下記本を読んだ内容を簡単にまとめます。

GDP国内総生産について)

 GDP(Gross Domestic Product)は日本語では国内総生産と訳します。1年間に生産(=供給)された最終生産物の総額です。また一方で、1年間どれだけのものが買われたかと同義です。

 つまり、生産されただけでなく販売されないとカウントされない点が注意です。

 例を挙げると2009年のアメリカのGDPは14.2兆ドル(≒1420兆円)でした。生産の面からみると、66.2%がサービス、13.4%が耐久財(冷蔵庫や自動車など)、13.4%が非耐久財(食べ物や衣服など)、そして7.7%が構造物となっています。

 サービスには医療や教育、金融、法律相談、散髪、自動車修理、芝刈り、掃除、保育等多種多様なサービスが含まれます。

 次に、需要の面から考えます。2009年アメリカのGDPの70%は個人消費で占められます。また11%が企業の設備投資になっています。

 需要から見たGDPを簡潔に表すと、C(消費)+I(投資)+G(政府支出)+X(輸出)- M(輸入)となります。

GDPに反映されない項目

 人々が以前と同じ生産性を保ったまま労働時間を減らし、毎年2週間の休みをとれるようになったことを考えます。この場合、人々の暮らしは良くなりましたがGDPには何の変化もありません。また、環境への取り組みで大気汚染が劇的に減ったとしても、GDPがマイナスになることはありません。

 一方、自然災害などで大きな被害が出ると、町の修復が必要になるため短期的にはGDPが上がります。この場合、被災した人々の暮らしは苦しくなっているのにGDPで見ると良くなっているように見えます。

 このように不完全な点もありますが、それでもGDPは経済の状況を知るための非常に優れた道具です。一人当たりGDPが大きい国は、やはりいろいろな意味で豊かな暮らしをしています。

経済的豊かさと幸福度の関係

 このGDPと幸福度について調査を行った結果があります。

 幸せと子と絶えた人の比率から不幸せと答えた人の比率を差し引いた値を幸福度指数としています。

 先進国は経済面で高い位置にいますが、幸福度は概ね40%程度です。一方でコロンビアやベトナムは経済面では80%以上に位置しています。  つまり、経済的な豊かさと国民の幸福感は必ずしも相関するわけではないことが分かります。

 この関係だけ見るとむしろGDPが高いと幸福度指数は収斂されていき、GDPが低いと幸福度指数にはバラツキが表われるようにもみえます。

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※出展:第一生命経済研レポート2016.07より抜粋

終わりに

 GDPについてまとめました。経済発展は国民が豊かに暮らすために必要なことですが、それが幸福度に必ずしも繋がっていないことが分かりました。示唆に富む結果と思います。

ファイナンス学び編(IRR/NPVに関して)

はじめに

 製造業で働く中で、設備投資は利益拡大に必要な手段です。投資の判断基準となるIRR/NPVについてまとめます。参考資料は下記です。

NPV/IRRとは

NPV(正味現在価値)について

 NPVとは、Net Present Valueの略称で日本語では正味現在価値といいます。

 NPVとは、初期投資を含めたすべての将来キャッシュフローの現在価値(Present Value)の正味合計値(Net)です。NPVがプラスの事業(プロジェクト)は実施すべき、NPVがマイナスの事業は実施すべきではないと判断することが可能です。

IRR(内部収益率)について

 IRRとは、Internal Rate of Returnの略称で日本語では内部収益率といいます。

 IRRとは、NPVをゼロにする割引率です。それは事業の予測利回りを意味しています。IRRがハードルレートを上回る事業は実施すべき、IRRがハードルレートを下回る事業は実施すべきではないと判断します。

NPVとIRRの共通点と相違点

 NPVとIRRは投資の意思決定のためのツールです。また、将来キャッシュフローで割り引くDCF法に基づくという2点において共通しています。

 途中のプロセスや価値そのものを議論したい場合はNPV法を用いるのが望ましく、予算に制約がある環境下で複数の事業の優先順位を行いたい場合や割引率が明確に定まらない場合はIRR法が望ましいです。

NPVの例

 初期投資100億円を要し、以降6年目までのキャッシュフローが下記のような場合のプロジェクトAがあります。プロジェクトAは実施すべきかNPV法によって意思決定します。

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 NPVは各年において正味現在価値を求めてから足し合わせます。割引率は5%としました。すると、合計は66.7億円となります。従い正の値であることから本プロジェクトは実施すべきと結論づけることができます。

割引率の決め方

 この割引率は割引人(企業)や審査によって変わります。この手形が不渡りになる可能性が高い場合は、手形割引料が高く設定されます。一方、不渡りになる可能性が低い場合は手形割引料も低くなります。


・経営数値
・過去の手形取引履歴
・企業規模
・事業歴
・信用情報
等々を総合的に勘案して、信用力を調査します。 

(参考) 【保存版】手形割引率の計算方法・相場。手形割引率はどうやって決まるのか?安い手形割引料の業者の選び方 | 資金調達BANK

NPVとIRRの関係

 仮に下記3つのプロジェクトから投資すべき1つのプロジェクトを選ぶことを考えます。ハードルレートを13%とします。

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 NPVではプロジェクトAが最も高くなっています。逆にIRRではプロジェクトCが高くなっています。

 NPVとIRRにて結果が異なる場合、どちらを選択すべきかが問題となります。

 この場合、ファイナンスではNPVを優先すべきといいます。これは、企業のゴールは企業価値を高めることが目的だからです。つまり、正味現在価値が大きいAを選択する必要があります。

 しかしながら、企業の予算枠が決まっている場合はプロジェクトの効率性を重視する必要があります。そうなると逆に内部収益率(IRR)が高いC→B→Aの順番となります。

終わりに

 NPVとIRRについて学びました。単純な回収期間法と異なり、現在価値を考えながら行うNPVやIRRの方が詳細に議論が可能な手法です。

 NPVとIRRはそれぞれ適材適所で使い分けることが必要であることも理解しました。

気づき_両利きの経営を読んで(その2:イノベーションストリーム)

はじめに

 今回も、スタンドフォード大学のオライリー氏らの著書である両利きの経営の内容及び気づきをまとめます。

イノベーションストリーム

 市場や技術の意向が企業や産業に与える影響や、そうした変化が既存事業の脅威となりうる状況について、分析的に考えるフレームワークを著者らはイノベーションストリームとして提案している。

 イノベーションを起こすときには、①新しい組織能力を身につけるか、②新しい市場・顧客のに対応する場合がある。

 この関係を分解すると下記表のようになる。   f:id:fumio-eisan:20200725205104p:plain

 領域Aは、企業が既存の組織能力を拡大し続け、新しい製品・サービスを既存市場に提供する場合です。

 領域Bは、最も破壊的で、企業は新しい組織能力を開発し、かつ新市場に対応しなくてはなりません。

 領域Cはそこまでは快適はないものの、既存の市場・顧客に新しい製品、サービスを届けるために、企業は新しい組織能力を身につける必要が生じます。

 領域Dは、企業が既存の組織能力を使うものの、新しい異なる市場に対応する場合です。

富士フィルムの場合

 富士フィルムは2001年時点ではコダックと同様にフィルム販売の世界的リーダーとして互角でした。

 富士フィルムは強力な製造スキルを持ち、小売部門における存在感も大きかった。一方、世界におけるフィルムの売り上げは2000年をピークに急下降し、2005年には半減しました。

 この危機に対応するために、富士フィルムは化学分野の専門知識を新規市場に活かそうと努力し始めました。当時CEOの古森氏は「自分たちの技術資源や経営資源を活かせる分野はどこかを見極めなくてはならなかった」といいます。

 財務的圧力の中で、古森氏が明確に打ち出したことが、自社の独自技術を新しい製品・サービスに対応することを重視する新しいビジョンです。

 5千人を解雇するとともに、研究開発を中央に集約し、研究の初期段階と新技術に焦点を置きなおしました。また、関連する新しい組織能力を獲得するために、積極的にM&Aに取り組み始めました。

 従業員から出てきた新規事業案に資金を拠出できるように、社内ベンチャーキャピタルのプロセスも用意しました。

 下記表のとおり、富士フィルムは現在年商230億ドルの企業となりました。同社は、エレクトロニクス(複合機半導体材料、携帯電話用レンズ等)、医薬品、化粧品、再生医療等革新となる組織能力を活かして、多様な産業で戦っています。

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 古森氏は「自分で変化を作り出せる企業がベストな企業だ」と指摘します。

終わりに

 富士フィルムを例に、イノベーションストリームについてまとめました。社名となっているフィルム分野から大きく事業を変えていくことは、おそらく社内で反発する人も多かったと思います。

 その中で、それでも新しい事業へ転換していくことはリーダーシップが強く求められたのだと想像します。

 私自身は従業員側の立場での振る舞いを見直すいいきっかけとなりましたし、経営側の立場をより深く理解しようと思える内容でした。

 

気づき_両利きの経営を読んで(その1:探索と深化)

はじめに

 今回は、スタンドフォード大学のオライリー氏らの著書である両利きの経営の内容及び気づきをまとめます。

サクセストラップ

 企業が利益を長期渡り確保するためには、探索と深化の両輪を上手くハンドリングすることが必要です。深化は既存事業において、漸進的な改善・開発を進めていくことです。一方、探索はコアとなる新規事業を発見・成長させていくことになります。

 一方、グローバル化やデジタル技術導入によって変化に直面した組織が生き残るためには、この継続的な漸進型イノベーションにより既存の資産と組織能力を深化させつつ、新しい市場や技術を探索することが必要になります。

アマゾンの成功例

 ジェフベゾスは1994年にアマゾンドットコムを法人化し、「地球の最大の書店」として宣伝しました。1996年、アマゾンの売上高は1600万ドルでした。そこから2016年時点で、900億ドルを売り上げています。

 マッキンゼーの調査によると、競合する小売大手5社と比較して、アマゾンの取扱商品数は約7倍です。価格は5~13%安く、顧客満足度は13%高いようです。また、アマゾンの売上高の6%を研究開発費に充てていますが、これは他の小売業者の3倍です。

 アマゾンのリーダーたちは、効率性や漸進型改善が重視される小売りや物流などの成熟事業を深化するのと同時に、既存の資産や組織能力を使って、柔軟性と実験が求められる新領域の探索を行うことができました。

 ベゾスの戦略は短期的な収益性よりも、フリーキャッシュフロー(FCF)や市場シェアを増進させる長期的見解に立って意思決定することを重視しています。「利益率は最適化の対象ではない。私たちが望んでいるのは、一株当たりのFCFの絶対額を最大にすることだ。FCFは投資家が使えるものだが、利益率は使えない」といっています。

深化と探索に向けた戦略と実行

 アマゾンのストーリーは、企業が既存の組織能力と市場を深化しつつ、新しい組織能力や市場を開拓している典型例です。

 ベゾスが指摘するのは、顧客志向を打ち出す企業は多いものの、そのうち大半がそうなってないといいます。「自社の顧客には何が必要か」から始まる戦略のほうがはるかに安定しているといいます。その問いかけをしたうえで、自社のスキルとのギャップを調べていくのだ、とのことです。

 kindleは、通販販売と事業がバッティングしています。しかし、アマゾンは短期的にいくつかの既存事業とバッティングすることを厭わないといいます。

 確かに、弊社においてもお客様からしたら複数の同じ用途に使う商品があります。それ自体は、弊社の営業側がそれぞれの商品のすみ分けをお客様側に説明していることとと思います。

Ball社の例

 著書では、アメリカのボール社(Ball)も紹介されています。  このBall社は1880年にブリキ缶の製造を始めた企業です。その後、ガラス製容器や冷蔵庫用ガスケット等広くメインとなる事業を変えながら成長した企業です。現在では、容器事業と航空宇宙事業の離れた2業種となっています。

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 同社は未来の成功のカギは、卓越したオペレーションを通じて「現業の価値を最大化」することと、専門技術を活用して「新しい製品と組織能力を拡大する」ことの両方が必要として明記しています。

終わりに

 探索と深化を続けてきた企業は環境に対して大きく変化することを厭わないと感じました。これは、従業員の立場からすると前向きに仕事をする人間は良い刺激となり見方となってくれますが、変化を嫌う(特に年齢が高い)従業員からは反感が生まれるのでしょう。

 日本では労使協調といわれていますが、大きな変革を要する場合はこの仕組みが非常に足かせとなっている気がします。

 結果的に自らが変わろうとする意識を持たない限りはどこかで限界が来ます。生物学的にも環境に対応できる品種が生存確率が高いそうです。

 まず自分自身が変わろうとする意識を持ち続けられているか(ここ数年は持ち続けられています)を意識づけられる気づきの多い内容でした。

気づき_コロナショックサバイバルを読んで(その1)

はじめに

 冨山和彦氏の著書「コロナショックサバイバル」を読んだ気づきをまとめます。

経済重篤化の流れ

 昨今のコロナショックと10年前に起こったリーマンショックは、危機が瀕する順番が異なるといいます。

 経済の構造をグローバル企業(G)とローカル企業(L)及び金融(F)の3つに分けたとします。このとき、リーマンショックではリーマンブラザーズが倒産したことにより、金融(F)が最初にダメージを受け、それに伴ってグローバル(G)な企業が影響を受けました。そして最終的にローカル(L)な経済圏の中堅・中小企業が打撃を受けた形になります。

 今回のコロナショックの場合はこの逆が起きています。

 観光や宿泊、飲食・エンターテインメントなどのローカルなサービス産業がまず影響を受けます。こうしたL型産業群は我が国のGDPの7割を占める基幹産業群です。

 次に、耐久消費財とその関連の設備投資や部品供給、材料供給の受容でした。将来に大きな不安を持った時に高価な耐久消費財を購入しません。従い、自動車や家電などのグローバル企業が影響を受けます。

 そしてコロナショックから数週間から1か月ほどで生産停止や売上減少となったことで、企業は資金繰りが苦しくなってきます。時間が経過するほど借金は重くなる一方で事業は傷んでいき、返済能力はむしろ弱まって、回収見込みが低下して不良債権化する可能性が出てきます。

 そうなると今度は金融機関側(F)のバランスシートが痛み出し、信用創出能力(*)が既存して金融収縮が始まり、ますます実体経済を縮小させる悪循環が生まれかねません。

*信用創造:預金されたキャッシュを他に必要な人、企業へ貸し付けることで見かけの銀行預金が増える状態のことです。

危機の乗り越え方は歴史から学ぼう

 コロナショックにおいて本格的な収束の目途が見えない現在の状況で、不確実な未来は誰もが予想できません。過去の同様の経済危機やリスクイベントからすると〇〇となる可能性が高い、となるだけです。

 しかしこの歴史から学ぶ姿勢はドイツの宰相ビスマルクが説いているように、非常に重要であると考えます。

 危機の襲来に対峙し、これから起きることに対して最善の準備と最良の決断をするには、想像力が重要です。歴史はまさに想像力の基盤になります。今回は、リーマンショックについておさらいをします。

リーマンショックについておさらい

 2000年代のバブル崩壊及び世界同時テロによってアメリカは景気が停滞していました。従い、アメリカの銀行は低金利政策によって景気を活性化させようとしていました。

 その低金利政策により住宅への投資が加速し、不動産バブルが起こりました。この不動産バブルによってサブプライムローンが人気となりました。このサブプライムローン低収入者向けの高金利住宅ローンです。

 このサブプライムローンは価格が上がり続ける住宅を担保物件とすることができました。従い、リスクが低く見積もられるため人気の金融商品となりました。

 しかしそれでもリスクが気になるため、このサブプライムローンを小口の債権として投資家に販売しました。また、この商品を株式や証券と組み合わせたパッケージとして、証券会社やファンド、生命保険会社が扱っている高利回り商品として一般投資家に売っていました。

 リスクが低く利回りが良いことからこのパッケージはとても売れました。従い、それに伴って住宅価格は上がりました。この住宅価格が上がり続けると、流石に売れなくなってきてしまいました。    すると住宅価格がみるみるうちに下がりました。さらにそれに伴ってパッケージされていた証券や株式も下がる結果となりました。これにより世界的な株安となりました。

 このパッケージ商品を多く扱っていたリーマンブラザーズは耐え切れず経営破綻してしまいます。この出来事からリーマンショックと呼ばれます。

 このリーマンショックは当時就任直後であったオバマ大統領によって7000億ドルの不良債権買取が行われます。賛否は合ったものの、これにより日本のバブル崩壊もよりも早く復活しました。

 オバマ大統領は日本のバブル崩壊についてよく学んだ結果、早く立ち直るべき行動として不良債権買取を行ったといわれています。文字通り歴史から学んで早く立ち直った良い例だと思いました。

終わりに

 歴史から学ぶことが重要である例をリーマンショックの例から実感しました。

 

気づき_コーポレート・トランスフォーメーション を読んで(その3)

はじめに

 今回も冨山和彦氏の本「コーポレートトランスフォーメーション」を読んだ気づき、内容をまとめます。また、経理に関する内容については、こちらを参考にしました。

図解! 製造業の管理会計入門

図解! 製造業の管理会計入門

事業探索投資の仕方

 新しい事業を探索する上での投資は、本業が生み出す営業キャッシュフローで行うべきといいます。また、経営のコア指標として営業キャッシュフローやEBITDAとしているところはまだ少ないといいます。

 ここで、営業キャッシュフローについて簡単にまとめます。

 そもそもキャッシュフローとは、会社における資金(キャッシュ)の流れ(フロー)のことをいいます。

 大きく営業活動、投資活動、財務活動の三つの区分に分けて表示します。今回の営業キャッシュフローは、通常の事業活動をして稼いだお金を表します。

 一方で、P/L(損益計算書)やB/S(貸借対照表)は一会計期間や一定期間の終点時点での状況を表したものです。

 P/Lの数値がいじくり回されて当てにならないのなら、直接キャッシュを見よう、という動機で用いられる手法がこのキャッシュフローになります。

   また、EBITDAも営業キャッシュフローに近い考え方の指標になります。営業利益に減価償却費を足したものになります。「イービットディーエー」とか「イービットダー」と呼ぶようです。

 EBITDAを使用すると、異なる業種にも統一した業績指標を適用できます。つまり、設備投資が嵩む産業とそうでない産業と比較することが可能になります。

キャッシュフロー経営

 下のC/Fは財務会計のP/Lの利益(300)から出発して、営業活動のC/F、投資活動のC/F、財務活動のC/Fを順次調整して最終的なキャッシュの増減を求める構造です。  利益とキャッシュの増減が大きく乖離しているため、倒産の原因になります。

 

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A.営業活動のキャッシュフロー

 いわゆる「儲け」に関わるキャッシュフローです。B/Sの社内留保(カネ)の増加に関わるものであります。  ①売上があっても売り上げ債権(見えない在庫)を放置すれば実際にはキャッシュが入ってこない、②固定費を期末在庫に配布すると本当はキャッシュが出て行っているのにP/L上では費用にならない等の金額修正が行われています。

B.投資活動のキャッシュフロー  これはB/Sの「モノ」(生産設備など)の取得に関わるキャッシュフローで、会社が行った設備投資の状況を示すものです。  工場や機械装置を購入すればC/F上は多額のキャッシュが出ていきますが、あくまでもキャッシュと生産設備の等価交換であるためP/L上は何も表れてこない「見えない取引」になります。

 従い、安易な生産設備取得は黒字倒産の原因になりやすく要注意と言えます。

C.財務活動のキャッシュフロー

 B/Sの「カネ」の調達に関わるキャッシュフローです。

見えない取引に注意する

 さて、P/Lだけ見ているとキャッシュフローの危険な変化を見落とす可能性があります。

例1.固定費の配賦

 固定費を製品に配賦し、その製品が在庫になる場合既にキャッシュが出ていっているのにP/Lには費用が計上されていないため、キャッシュ危険な状態になります。

例2.在庫の長期死蔵

 多額の費用を掛けた在庫を長期死蔵する場合、既にキャッシュが出て行っているのP/L上では費用が計上されていないためキャッシュ危険な状態になります。

例3.売上債権の放置    製品が販売されればP/L上に売上が計上されます。しかし、売上に見合うキャッシュがすぐに入るわけではなく売上債権を受け取った上で、一定期間後にキャッシュが入ってきます。

 従い、長期にわたり売上債権を放置すればキャッシュ危険な状態になります。

例4.生産設備の取得

 生産設備を取得した場合、実際にはキャッシュが出ていっているのにP/L上には費用は計上されません。これは、キャッシュと生産設備を等価交換したと見なされるためです。

 既にキャッシュが出ていっているのにP/L上の減価償却費は通常ゆっくり行われるため、キャッシュ危険な状態になります。

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終わりに

 新しい事業を始める場合のキャッシュの使い方とそもそものキャッシュフローをまとめました。