企業戦略論第二章「パフォーマンスとは何か」要約:バーニー著
はじめに
バーニー著企業戦略論の第二章「パフォーマンスと何か」の要約です。
要約
戦略とパフォーマンスの関係
著者はパフォーマンスを「企業が期待されているだけの価値を生み出すことができるかどうか」と定義しています。
つまり、企業が所有する経営資源(労働力、経営力、起業家としてのスキル、物理的資本、金融資本)によって生み出すと期待される経済価値のレベルに到達しているかどうか、という意味です。
このパフォーマンスにおいて、期待された以上の価値を生み出している差分を経済的利益(EP:Economic Profit)もしくは経済レントと呼びます。
経済的利益が標準を上回る企業は競争優位の状態にあるといえます。そして、これは競争優位な戦略を実行しているためと解釈できます。
企業のパフォーマンス評価
このパフォーマンスを評価する方法は大きく分類して4種類あります。
1.企業の存続期間
2.ステークホルダー・アプローチ
3.単純な会計数値、修正会計数値
4.その他
この中でも、3.単純会計アプローチと修正会計アプローチについてまとめます。
単純会計アプローチ
最もよく用いられる企業のパフォーマンス測定は、会計上の基準です。 企業パフォーマンスを認識するための会計的アプローチでは、多くの場合「比率」分析を多用します。会計情報に基づく比率には様々なバリエーションがあります。代表的なものを下記に示します。
この会計上のアプローチは企業のパフォーマンスを知るうえで有用なツールです。しかし、万能ではありません。問題点についてまとめます。
経営上の裁量
経営幹部は会計上の手法を選択する上で、ある程度自由裁量権を持ちます。売り上げの計上方法、後入れ先出し/先入れ後出し等の在庫価値評価手法、減価償却率(定率法か定額法か)等々です。
その結果、会計のパフォーマンスはある程度経営上の意向や選好が反映されてしまいます。
短期利益重視のバイアス
次に、短期利益重視のバイアスがかかる点に注意する必要があります。すなわち会計上では、より長期的視野(3~10年)に立った複数年度にまたがる投資は、その投資が直接収益を生み出さない年度においてもコストとして賦課されます。
短期ベース(1年や四半期ごと)の会計的パフォーマンスを優先すると、長期的投資を行うことに失敗することに繋がります。著書では、1980-2000年の20年間の世界市場で日本企業が台頭してきた理由の一つとして、日本企業は短期の会計上の利益をそれほど重視していない事実があるためと記されていました。
目に見えない経営資源やケイパビリティの価値評価
無形の経営資源やケイパビリティの価値が会計的手法に反映されていない問題点があると指摘しています。
無形の経営資源やケイパビリティとは、「顧客との密接な関係」や「企業へのロィヤリティ(=忠誠心)」、「ブランドの認知」などの明示的に記述し、価値評価が難しい因子です。
これらはつまり人材に関する資産評価と解釈できます。
修正会計アプローチ
これまでの単純会計的アプローチを加工修正して、企業の経営パフォーマンスをより正確に評価する手法が検討されてきました。
パフォーマンスとは、企業への期待と現実の差であるとまとめてきました。この期待されるパフォーマンスはその資本コストに反映されます。資本コストは、資本の提供者(債権者・株主)がその投資に対して期待するリターンを意味します。
修正を施した会計指標のうち4つを取り上げます。それらは、投下資本利益率(ROIC)、経済的利益(EP)、市場付加価値(MVA)、そしてトービンのqです。これら4つの指標を合わせ考えることで、企業の真の経済的パフォーマンスがよりクリアになります。それら4つの定義は下記です。
ROIC=NOPLAT / 投下資本
EP=投下資本×(ROIC-WACC)
MVA=(株主資本の市場価値+負債の市場価値)-会計上の簿価
トービンのq=企業の市場価値 / 総資産の簿価
今回は紹介にとどめることとし、次回にこれら4つの詳しい求め方をまとめたいと思います。
おわりに
企業のパフォーマンスを評価する指標は大きく4種類あることをみてきました。しかしどれも全て網羅しているわけではなく、評価者が総合的に勘案する必要があることが分かりました。
著者はこの中で日本企業が躍進した理由の一つに短期的な会計上の指標を重視していなかった点を述べています。株式会社においては株主の意向を企業の戦略に考慮・反映させる必要があります。
日本企業においては短期的な利益を出すことを要求する(と思われる)株主の意向を優先していない、と解釈しました。国ごとの株主・企業の関係性についても調べてみたくなりました。
企業戦略論第一章「戦略とは何か」要約:バーニー著
はじめに
企業戦略論として有名なバーニー氏の著書「企業戦略論」の第一章についてのまとめです。
要約
戦略の定義
ビジネスにおける戦略の定義は人によってさまざまあります。本著のおいては「いかに競争に成功するか、ということに関して一企業が持つ理論」と定義しています。
競争に成功する、とは企業についてどのような意味を持つかをかみ砕きます。
一般に競争を実行に移すと、企業のポジションは「競争優位」「競争均衡」「競争劣位」のどれかの状態になります。 これら三つのポジションは下記で定義されます。
1.競争優位:企業の行動が経済価値を創出し、同様の企業がほぼ存在しない 例:マイクロソフトでの「OS分野の強みをアプリケーションソフトウェアへ展開」 2.競争均衡:企業の行動が経済価値を創出するものの、他の複数の企業も同様の行動をとっている 例:ホンダがアメリカへ大型二輪を販売しようと乗り込んだこと 3.競争劣位:企業の行動が経済価値を生み出さない
戦略と企業のミッション
企業のミッションとは、その企業の根本的な目的と長期目標のことです。このミッションに基づいて競争戦略が練られることがよくあります。
逆に、競争優位な企業が優位である要因がミッションをみればわかる場合があるということです。ミッションは企業理念、経営理念、社是・社訓と呼ばれることがあります。
トヨタ自動車のミッション(=基本理念)
ここで、例としてトヨタ自動車株式会社の基本理念を下記に示します。
1.内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
2.各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
3.クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
4.様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
5.労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
6.グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
7.開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する
2020年4-6月の第一四半期の決算が報告されています。販売台数は前年同期比で50%減の115万8000台となるものの、営業利益139億円と黒字を確保しています。
トヨタ、2021年3月期 第1四半期決算を発表。営業利益139億円、純利益1588億円の黒字確保 - Car Watch
同業の完成車メーカーが軒並み営業赤字となる中、トヨタ自動車は黒字を確保しています。
これは私の目線から捉えると、グローバルな販売体制が整っている(6.グローバルで革新的な経営)ことや供給する部品メーカーとの原価・品質管理が厳格(7.開かれた取引関係を基本に)であることが要因であるように感じます。
戦略と企業経営の環境条件
競争優位獲得のために分析をするフレームワークとしてSWOT分析があります。このフレームワークは、企業内部に目を向けて企業の強み(S:Strengths)と弱み(W:Weaknesses)を洗い出します。さらに企業外部に目を向けて機会(O:Opportunities)と脅威(T:Threats)を洗い出します。
戦略を立てる上で、企業及び周囲環境を丁寧に分析する手段として有用なものといわれています。このSWOT分析により得られた知見を基に、取るべき戦略を練ることができます。
終わりに
ビジネスにおける戦略という言葉の理解とミッション(=経営理念)の関係を理解しました。特に経営理念については、より抽象的・概念的な言葉のほうが理解しやすくなります。一方で、その企業の独自色が失われてしまう恐れもあるため、語句一つ一つを入念に考える必要があります。
Youtuberの低評価率増加にみるソーシャルアバターの重要性
はじめに
私自身がInstagramやブログ等で情報発信を始めてから、発信者がSNS上でどう見られているかについて注意深く気にするようになりました。
人気となったYoutuberやタレントが失言や炎上事案によって世間的に叩かれるケースがあります。このケースをよく観察することで、いわゆるソーシャルアバター(MUP竹花氏が呼称)を明確に決めて運用していくことの重要性を感じましたので本記事でまとめます。
ソーシャルアバターとは何か
ソーシャルアバターとは、SNS上で発信者自身が演じるキャラクターのことです(MUP竹花氏が呼称したと認識しています)。
SNS上でブレないソーシャルアバターを演じて発信することで、フォロワー数増加やインフルエンサーへ繋がるといいます。
このとき、「3C」を設定することで他人を知人化させることができます。
・Complex:コンプレックスをさらけ出す
・Confidence:自分の自身があるものを明確に
・Controlled:権威性、社会的証明、返報性をだす
この3Cを活用することで、発信者のことを全く知らない人がサポーター(≒フォロワー、ファン)となります。
Youtuberの低評価率増加の要因
人気があり低評価率(=低評価数/(低評価数+高評価数))が低いYoutuberが炎上することで低評価率が高くなるケースが散見されます。これは先ほどのソーシャルアバターが崩れることにより生じるものと捉えることができます。
今回は、いわゆる炎上系Youtuberと異なります。元々高評価率が高いYoutuberが低評価率が高くなる場合を扱います。
派遣・借金あり・妻子なし40代男性のyoutuberの例
派遣・借金あり・妻子なしの40代男性という経歴をさらけ出したyoutuberが人気です。動画自体は日常のルーティンや休日の過ごし方、趣味であるソロキャンプ等を淡々とまとめたものです。
限られたお金の中で自身の趣味や楽しみを満喫している姿に共感を覚えて人気が出ていると理解しています。また、見た目が清潔感があり雰囲気のある顔立ちも人気の一因だと思います。
そんな彼ですが、最近ある要因で低評価率が高くなる炎上が起きました。その背景として、
・派遣仕事を退職し、引越しを行った
・引越した先では無職でYoutuberを仕事とする
・投げ銭による生配信を数回実施
このような出来事の後、低評価率が上がりました。
視聴者から批判される理由として、
・人間性が変わってしまった
・投げ銭目的での配信はやめてほしい
・こんな人だとは思わなかった
等、総じて当初認識していた性格や人間性と異なることに落胆したコメントが多かったです。
この事象を先ほどのソーシャルアバターで考えます。当初低評価率が低かったときは、丁寧な暮らしをしている派遣業の素朴な男性+見た目が良いことで人気がありました。
しかし、Youtuberを生業とすることへの表明や動画配信をきっかけとしてそのソーシャルアバターとは異なる一面がみえてしまったことで低評価が増えてしまったものだと思います。彼のもともとのソーシャルアバタ-である質素な丁寧な暮らしをしている面と異なる、お金に強い執着心を示す性格が垣間見えたことが低評価率増加の要因と理解します。
引越しを行ってまで新しいことに挑戦する姿勢は非常に素晴らしいことだと私自身は思います。また、お金を稼ぐことは生きていく手段なのでその行為は理解できます。
彼自身がYoutube越しに判断されるソーシャルアバターを意識していたか、あるいは意図的に作ろうとしていたか不明です。この事案からいえる重要な示唆は、ソーシャルアバターは一貫性を持たせるべきであるといえます。
中には、このソーシャルアバターを意識せず人々に共感される人間性の人がいるかもしれません。その方は、飾らずその思いや考えを発信しても炎上が起きません。しかしながら、私を含め万人から認められる人はそうそういません。
従って、Youtube含む情報を発信するプラットフォーム上ではそのアカウントで見えるキャラクター(≠自分自身)の見せ方に気を配らなければなりません。
※個人を中傷する目的での記事ではないため、名前は伏せています(検索すればすぐ判明しますが。。)。
終わりに
SNS上ではソーシャルアバターを演じることが炎上防止のためには重要です。
翻って、ビジネスの場面でも同じことが言えます。役職や職種によって相応のふるまいや態度があります。従って、それを演じる気持ちを持てているかがビジネスパーソンとして目の前の仕事を着実に進める鍵になります。
年齢に応じて求められる資質や特性が変わるため、常に一つ高い年次や役職を意識してそこに近づくように自分を変えていくことがビジネスパーソンとして良い年齢の重ね方だと思っています。
マッキンゼー編「企業価値評価」の内容(第2章:企業価値不変の法則)
はじめに
今回はコンサルティング会社であるマッキンゼー社がまとめた「企業価値評価」について、読んだ内容をまとめます。今回は第2章についてです。
企業価値不変の法則
「キャッシュフローが変わらなければ、企業価値が変わらないこと」を企業価値不変の法則と呼称します。つまり、企業が生み出すキャッシュフローの総量に変化がなく、キャッシュフローに対して株主や債権者が持つ権利だけが変わった場合には、企業価値は不変となることです。
例えば、デットエクィティスワップや自社株買いのための社債発行がその例です。企業価値が一見変わるようにみえるものの、この法則に当てはめると変わらない例を下記に示します。
デットエクィティスワップとは
デットエクィティスワップ(Debt Equity Swap)とは、過剰債務について債務を債権者が現物出資により株式化することをいいます。
債務者(お金を借りている側)のメリットとしては、有利子負債が軽減されて資産が増える見た目となるため財務内容を改善できることです。一方、デメリットは債権者(お金を貸す側)から経営に干渉されることや配当負担が増加することなどがあげられます。
具体的には、債権者が返済期日の到来した借入金などの債務を現物出資する形で増資することによって、資本に振り替えます。債務者が負債の返済が困難な場合に行われることがほとんどです。
自社株買い
自社株買いは企業が発行している株式を、自らの資金を用いて市場から買い戻すことです。
上記画像は自社株買いを行った場合の株価や時価総額などの諸表変化の想定を示します。自社株買いを行うことにより、10百万株から9万株に減ります。すると時価総額も減ることになります。しかしながら、この時価総額を当初の値に戻そうとして株価が上がる側に動きます。
実際にこのような動きが本当に起こるのかは実施例を知らず不明です。企業側がキャッシュを持っている場合は株主としては研究開発や設備投資によって本業の利益率を上げる手段を取ってほしいと望むと考えます。
自社株買いはキャッシュの使用用途が限られているのでは、と株主から思われる要因になり得ます。
また、企業価値不変の法則に従えば、キャッシュフローは増加しないため株価が上がるような都合がいい状況は起こらないとのことです。
自社株買いのようにEPS(Earnings Per Share)が増加すると称する取引を提案された場合には、経営者はどこに価値創造の源泉があるのか注意深く検討しければならないのです。
企業買収
本著によれば、統合される2社のキャッシュフローの総和が買収前より増加する場合のみ、企業買収によって価値創造が起きます、そうしたキャッシュフローの増加は、コスト削減、売り上げ成長の加速、固定資産や運転資金のより効率的な活用によってもたらされるものです。
製造業においては、複数製造地点を統廃合することによって製造コストや固定資産の削減に繋がります。つまり、この場合はキャッシュフローが改善(=利益率向上)するため、企業価値向上に繋がります。
従って、キャッシュフローが変わらない合併の場合は将来期待されるキャッシュフローが変わらないため、本著では企業価値は変わらないとしています。 しかしながら欧米ではキャッシュフローが変わらないとしても企業価値が創造されるという考え方があります。この考え方に対して、マルチプル拡大、評価見直しという専門用語まであります。
本著ではマルチプル拡大を実証的に示すようなデータは存在せず、企業買収を正当化する理屈としては完全に間違っているといいます。企業買収を正当化する理由としてマルチプル拡大が用いられているとのことです。
ファイナンシャル・エンジニアリング(割愛)
まとめ
企業価値はフリーキャッシュフローとWACC、成長率で決まります。このうちフリーキャッシュフローが増大しない限りは企業価値は増大しないのが企業価値不変の法則でした。
これは、WACCや成長率はフリーキャッシュフローから強く影響を受ける従属変数であると理解しました。結局はフリーキャッシュフローを生み出す本業を変えていかなければ企業価値は変わらない、という素直な考えに基づいた法則なのでしょう。
マッキンゼー編「企業価値評価」の内容(株主資本と社会的問題、本書の目的)
はじめに
今回はコンサルティング会社であるマッキンゼー社がまとめた「企業価値評価」について、読んだ内容をまとめます。今回は第1章についてです。
価値創造の基本原則
企業は手持ちのキャッシュを投資して、より多くのキャッシュを将来生み出すことで、その所有者に対して価値を創造します。
企業の価値創造の大きさは、ROICと売上高の成長率、そしてそれをどれだけ維持するかで決まります。ただし、ROICが投資家にとっての機会費用である資本コストを上回ったときのみ、企業は価値を創造するということを念頭に置く必要があります。
株主資本主義はすべての社会的問題を解決できない
企業の経営者が直面するトレードオフの中には、株主志向でもステークホルダー志向でも解決できないものがあります。
例えば、二酸化炭素の排出に伴い直接的に企業と関係しない第三者が影響を受けるといった、外部性と呼ばれる問題においては、ステークホルダー間の利益が客観的な基準で測定できず、これらの問題は企業1社の経営判断の域を超えてしまいます。
SDGsと企業経営の関係
SDGs(Sustainable Development Goals)は持続可能な開発目標と訳すことができます。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標です。
1972年マサチューセッツ工科大学のメドウズらにより発表された「地球の限界」は、地球資源をふんだんに使いながら拡大してきた世界経済の成長は、このまま続くと100年以内に限界を迎えるという提言でした。
2015年に国連総会で決議されたSDGsは、国や途上国だけでなく、先進国の課題を網羅し、民間企業による取り組みを求めた点が大きな違いでした。
持続可能性を重視するSDGsでは、本業そのものにSDGsに考え方を組み込むことを前提としています。そのため、事業を行い企業が利益をあげることが同時に社会や地球環境の改善につながるようなビジネスモデルが求められています。
ネガティブな言い方をすると、企業が事業活動を行う際にSDGsの考え方を組み込まなければ、株主やステークホルダーからの信頼を得ることに繋がらない状況となってきています。従って、二酸化炭素を大量に排出する企業においてはこの観点で排出量を大幅に減らす研究開発等の取り組みをしている点をアピールすることが、SDGsの取り組みに繋がり株主やステークホルダーへの信頼を得ることになるのです。
本書がまとめること
価値創造の大きさは、企業の成長率とROICが資本コストをどれだけ上回るかの組み合わせによって決まります。この価値創造の原則は、事業戦略の要である競争優位性と結びついています。企業は明確に定義された競争優位性がなければ、高い成長とROICを持続できません。また、持続的な価値創造には、先ほどの社会・環境・技術や規制などの動向を幅広く考慮した長期的な努力が必要であることも忘れてはいけません。
終わりに
企業価値評価として、利益率とROICを上げています。他の著者(冨山氏や大前研一氏など)の方が書く戦略本においても、このROIC:投下資本利益率を上げていました。株式会社においては出資された資本や銀行からの融資を元に利益を生み出す企業活動を行っています。単純な利益率であれば、これら資本や融資の影響が反映されていません。
ROICを重視する考え方が各会社のIR情報で反映されているか確認してみようと改めて思いました。
大前研一著:「企業参謀」の内容と気づき(ポートフォリオ管理、製品・市場戦略)
はじめに
経営関係について学んでいます。今回は大前研一氏の企業参謀を読んでおり、その内容をまとめます。
製品系列のポートフォリオ管理
1960年代中ごろに業績の低迷から脱却することを図るため、GE社が抜本対策としてマッキンゼー社とボストンコンサルティンググループ社と連携して生み出した経営管理手法です。
複数の事業を扱う企業において、何をどのような順番で事業を優先順位付けして取り組めば良いかを示すためのフレームワークです。
事業マトリクス
第一のプロセスは多種多様な製品系列のおのおのについて、次の二つの変数に対する理解を深めることから始めます。
(1)会社が自由に操作できない、外的変数としての業種の健全性:産業セグメントの持つ成長性、収益性等 (2)与えられた業種における会社の持つ優位性、潜在力などの会社の努力次第で影響を及ぼし得る内的変数:シェア、技術力、資金力など
この二つの変数を軸に上記図のように表します。例えば、図中のAに示した事業は非常に有望な業種であるにもかかわらず、当該会社のこの事業の地位は劣位にあることを示している。一方、Bの事業は当該会社の誇りとする事業であるものの、業界自体は衰退の一途をたどっている問題児であることが分かります。
ボストンコンサルティンググループ社は、市場成長性とシェアから成る座標をこちらの4つの部分に分けることで表した。
製品・市場戦略
マーケティングとは、売ることに関する総括的な技術について指しているとされています。
上図は製品・市場マトリクスと呼ばれる表です。左下の象限に現有製品の持つ現有市場を示します。一番リスクが少ないケースは、市場を同じくして新製品を打って出る場合です。例えば、カメラメーカーであれば元々一般消費者向けに販売していたフラグシップの一眼レフカメラに対して、ライトユーザー向けのカメラ等といった場合です。次に、リスクが中程度の場合は市場が新しく製品が同じものです。先ほどのカメラメーカーの場合であれば、一眼レフカメラを業務用として展開するケースと考えられます。そして、一番リスクが高いケースは市場及び製品自体が新しい領域で勝負する場合です。例えば、カメラ技術を使って防犯カメラ+システムの活用による防犯システム販売等といった場合は製品も市場も新しいと考えます。
日本企業においては、おそらく市場が同じで新製品を開発する場合や同じ製品で新市場を開拓することは得意であると考えます。冨山氏のコーポレートトランスフォーメーションにて指摘されていた日本企業特有の経営方式である終身年功型に合うすり合わせ力が発揮される領域だからです。
製品・市場戦略策定のプロセス
ステップ1.市場性の動的把握
ステップ2.内部経済の分析
ステップ3.競合状態の把握
ステップ4.KFS(Key Success Factor)に照らした自社の強さ、弱さの理解
ステップ5.改善機会について仮説の抽出・評価
ステップ6.改善実施計画の作成・実施
ステップ7.モニター、必要な軌道修正
製品・市場戦略の策定にはこちらの7ステップを踏むことが賢明であるといわれています。PDCAサイクルに当てはまるとステップ1~5までがP;プラン、ステップ6がD:実行、ステップ7がC:チェック、A:分析となるため、プラン:計画を立てることが大部分を占めることを示しています。
終わりに
ポートフォリオ管理は複数の事業を経営する企業にとっては、事業全体を把握するために必要なフレームワークであると理解しました。製品・市場戦略に関しても同様なことが言えますが、いずれにしても客観的に判断しようと試みることで主観的な思い入れや色眼鏡を極力排除することが、利益率の向上と安定的な経営に向けた大事な手法であると思いました。
大前研一著:「企業参謀」の内容と気づき(イシューツリー、中期経営計画)
はじめに
経営関係について学んでいます。今回は大前研一氏の企業参謀を読んでおり、その内容をまとめます。
イシューツリー
大きな問題点(イシュー)を提示し、これを相互に重複することのない2つ以上のサブイシューに分割していく方法のことをイシューツリーといいます。
この手法により、以前は問題が大きくて手の付けられなかったものも、だんだんと手の付けられるような問題に分岐させることができます。
ある会社の製品Aが非常にコストが高く競争力低下が著しい場合を考えます。ここで、現実の製品Aでは価格政策面からも、マーケットサイズの点からも高コストがユーザに転嫁できない答えが出た場合を考えます。
要するに漏れなくダブりなく課題解決を行えるように可視化することが重要といえます。このイシューツリーの右側に具体的にスケジュールを記載して進捗を確認することを行えば、確実に課題をつぶしていけることに繋がります。
打つ手はVA(Value Analysis)、VE(Value Engineering)と呼ばれるものがあります。
VA,VEとは
VA, VEは購買管理の科学化、近代化の手法です。購買品を価格の面から調査分析し、コスト引き下げや新商品開発に役立てようとするものです。購買品が設計・機能面で、また材料・加工面で原価として適当かどうか、あるいは作業工程、原価構成、購買先はどうか等を検討します。
中期経営計画の立て方
大前氏が推奨する中期経営計画の立て方についてです。
参謀として経営企画が最も有効に力を発揮できるのは大体3年ぐらいを中心とした前後1,2年の期間です。
トップの主勢力は中期計画の立案と遂行に向けられるべし、という暗黙の了解があります。そして、日常業務のことはラインマネジャーにできるだけ権限を委譲すれば良いとされています。
ステップ1は目標値を決めることです。これは社長の一言で「売上高を〇〇にしたい」「配当を〇〇%上げたい」等です。
次にステップ2は現状のまま事業を進めた際に予測されるケースを想定します。このステップにおいてはシェアや売上高などの仮定を尤もらしい精度をもっておくことが重要となります。つまり、仮定を何事にもよらず明確にしておくことです。
次のステップとして、業務改善による効果を見極めます。製造現場のおいては製造原価、営業側においては販売価格や販売量を見直すことです。
そして、このステップ3を終えて目標値との差が埋まればOKです。しかし往々にして埋まらないケースがあります。これを解決する手法として戦略的な施策を考える必要があります。
例として事業の新規参入、分離撤退、M&A(同業、上流、下流)などです。
そして、最後のステップとしてこれら戦略的施策を組み合わせて目標に到達する組み合わせを考えます。リスクが許容できる範囲で、社是、社風に合った場合、これら戦略を全社的に実行するための詳細な計画書を立案することになります。
私自身、製造業の製造現場で働いています。この経営計画の立て方においては製造原価を下げる手段について、多く手法を企画・実行してきました。 この企画においては、実行のスケジュールが非常に重要視されてきました。その理由は、着実に利益率を上げるためのマイルストーンとなっているからだとこの章を読んで実感しました。
終わりに
イシューツリーについては、私自身が製造課題において原因・対策を考えるうえで活用しています。漏れなく、ダブりなく実行しているかという視点はマネジャー層からみたときに重要です。行き当たりばったりな行動になっていないか、振り返りながら業務を進めるうえでも活用できる手法です。
中期経営計画の立て方については、業務改善と戦略的施策の切り分けが頭の中で整理できたため有用でした。また、私自身が企業価値向上、利益率向上に貢献できる領域を再認識することができました。
経営層の視点を持つことは実業務を行う人間にとってなぜこの業務を行っているか認識する上で大事だと思いました。この認識を行っているか否かで業務への姿勢が変わるためです。引き続き学び、アウトプットしていきます。